細谷功・佐渡島庸平『言葉のズレと共感幻想』dZERO 2022年

前回の記事で触れましたが、トーストマスターズでスピーチをすると、そのスピーチに対して「論評スピーチ」がなされます。この「論評スピーチ」をするためにスピーチを聴く際、私はそのスピーチの「違和感」に注目します。

具体的には、

・そのスピーチのメッセージに対して各コンテンツが効果的な論拠となっているか?

・論拠となるコンテンツの数は適切か?

・不要なコンテンツはないか

などに基づくふんわりした基準が自分の中にあって、その基準となる項目をリスト化して事細かにチェックするのではなく、「あれ?何となくおかしいぞ!?」と一瞬持った違和感を探って、言語化して論評を組み立てています。だから聴き方として、スピーチの世界に入り込まない、どこか俯瞰して批判的に聴いています。あえてスピーカーに寄り添わないようにしています。

 

前年度(2022-23年度)、トーストマスターズ日本支部で論評コンテストが開催されたとき、私の所属クラブにおいて、他クラブの会員さんを招いて論評ワークショップを開催されました。彼女はスピーチを

「スピーカーの気持ちに焦点をあて、スピーカーの気持ちに寄り添って、スピーカーの気持ちにとことん共感して、きいてみる」とのこと。

彼女が論評で大切にしているのは「共感」。そう、私の真逆。

でも、感覚・感性で論評を捉えているところに共通点を感じて、「共感」を理解したいと思うようになりました。その過程で目に留まったのが…、

細谷功佐渡島庸平『言葉のズレと共感幻想』dZERO 2022年

前回紹介した『具体と抽象』の著者細谷功氏と『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』を手がけた編集者佐渡島庸平氏の対談集です。

 

共感させるとは、いかに他人に勘違いさせるか…。
聴衆の共感を得るスピーチを作るための思考法をいくつか看取しました。
・感情に対して一回メタ的になる
・メタでありながら感情豊かな人になる
・いい物語とは?…感情の流れがリアリティを持って描かれること

 

また、他者と議論をする際のTipsとして、
・議論の前に言葉をそろえる
・常に上位目的がそろっているか話し合う、そうすることですれ違いを正し、行動指針を共有することができる

 

過去・現在・未来の関係について
・未来は常に過去を変えている、過去の中で思い出しているのは現在の価値観を支持するもの
・今の自分の感情が肯定しやすい過去を都合よく選んでいるにすぎない

 

その他印象に残ったのは、
・抽象的思考をする人とそうじゃない人の差は能動的か受動的か…、能動的な人はすべての変数が自分の意思で変えられると思っている
という叙述。
自由にそして柔軟に考えるために、能動的になり、抽象的思考ができるようになりたいと強く思いました。

 

さて、論評ワークショップをしてくださった会員さんに、
「私はスピーチを聴くとき“違和感”を探っています」と伝えたら、
「違和感からスピーカーの言いたいことを突き詰めていくこと、スピーカーの気持ちがわかるからこそできることなんじゃないかなあ」と言ってくださいました。

「共感」と「違和感」、相反する言葉だけど、抽象度を上げると「感覚」として一致する、そしてスピーカーと距離を取ろうとしながら、無意識にスピーカーを理解しようと思っていたのかなあと思いました。

 

最後に本書の読書記録を書いたカフェを紹介します。

1軒目は京都出町柳にある  COFFEE HOUSE maki(コーヒーハウスマキ)

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写真はモーニングセット。トーストをくり抜いてその中にゆで卵やハム・サラダを入れてお弁当のようにしています。

2軒目は、京都御幸町の甘味処 温(onn)

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写真は「浮雲いちご」。お餅の中に忍ばせたゆずや苺の酸味と、お餅を包むミルク餡やあたたかいミルクのソースの甘味のバランスがよくて、美味しかったです。